離婚コラム
自分の意思に反する協議離婚届が受理されることを防ぐための制度です。
もちろん、離婚意思がないのに協議離婚届が受理されたとしても、その離婚は本来無効です。とはいえ、たとえ自分に離婚意思がなくても、相手方が離婚届を出してそれが受理されてしまったら、戸籍を訂正するためには離婚の無効を確認する判決をもらう必要が出てきてしまいます。それでは非常に面倒ですので、このような制度が設けられています。離婚届のほか、婚姻届、認知届、養子縁組届、養子離縁届についても、不受理制度が設けられています。
なお、当然ではありますが、協議離婚ではない離婚(=調停離婚や裁判離婚など)については、不受理申出の対象外です。
役所の担当者が「本当に離婚意思はあるんですよね」と夫婦を面接して確認するわけではありません。役所でチェックできるのは離婚届の形式的な面だけですので、形式的に問題がなければ、そのまま受理されてしまいます。
法律上、協議離婚が成立するには、離婚届を提出しこれが受理される段階で、夫婦に離婚意思が存在していなければなりません。
離婚届を作成した場合に離婚意思があっても、受理される前の段階で離婚を翻意した場合、離婚意思を撤回することができます(最高裁昭和34年8月7日判決参照)。
大きく分けると、①自分の意思で離婚届にサインして届出を頼んだものの、その後離婚を翻意した場合や、②自分には離婚意思がないが、相手方が勝手に離婚届を提出しかねない場合、の2つがあります。
②のような場合はあまりないでしょうが(そもそも、離婚届を偽造するのは立派な犯罪です)、離婚かどうかを思い悩んでいたような場合だと、サインをした後で翻意するのはしばしばありうることです。
本人が身分証明書と印鑑を持って市区町村役場に赴き、不受理申出書を提出します。最寄りの役場でも構いませんが、できるだけ本籍地の役場に提出するようにということになっています。
郵送や代理人による申し出は、原則としてできません。全くできないわけではありませんが、公正証書の作成等が必要となってしまいますので、余計に手間や費用がかかってしまいます。
届出の相手方を特定して、「この人からの協議離婚の申し出については受理しないでほしい」という形で申出をすることもできます。その場合、相手方の氏名、生年月日、住所、本籍、戸籍筆頭者といった情報が必要になります。
申出の日から、協議離婚届は受理されなくなります。その効果は、申出の取下げをしない限りは、一生涯続きます。
不受理申出をした後に他の市区町村に転籍(戸籍を移すこと)した場合であっても、その効果は継続します。
先に述べたように、いったん不受理申出書が受理されると、申出の取下げをしない限りは離婚届を受理してもらえなくなります。不受理申出をした後でそれが不要になったという場合には、取下書を提出しておく必要があります。
もっとも、不受理申出の効果が発生している期間中であっても、本人が役場窓口に赴き本人確認書類を提出すれば、協議離婚届を受理してもらうことは可能です。