離婚コラム
嫡出子というのは、法律上の婚姻関係にある父母の間に生まれた子のことです。嫡出子の要件としては一般に、①母が妻である(あった)こと、②夫の子であること、③婚姻継続中に懐胎(妊娠)したこと、の3つの要件があげられます。
大きく分けると、生来の嫡出子と準正による嫡出子の2つがあります。
上記の3つの要件のうち、①は戸籍謄本を見れば一目瞭然ですが、②③についてはすぐには分かりません。
そこで、民法は、まず②について、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子であると推定しています。
そして、民法は、③について、(ⅰ)婚姻成立の日から200日を経過した後、あるいは(ⅱ)婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものであると推定しています。
例えば、婚姻成立の日から250日後に生まれた子がいたとすると、婚姻中に懐胎したものと推定されることになります。そして、婚姻中に懐胎したと推定される結果、夫の子と推定されることになります。
推定が及ぶ場合であっても確定ではありませんので、別の証拠で覆すことは一応可能です。しかし、その手段は後述の「嫡出否認の訴え」のみに限られます。嫡出否認の訴えができなければ、覆す手段はもうありません。
上記の嫡出推定を受ける嫡出子のことです。
例えば、婚姻成立の日から250日目に生まれた子、離婚日の100日後に生まれた子が、これにあたります。
推定を受ける嫡出子について、夫が自分の子供ではないと主張したい場合、嫡出否認の訴えという特別の訴えを提起しなければなりません。この訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならないと定められており、夫にとっては極めて厳しい要件が課されています。
形式的にみれば上記の嫡出推定を受けることになるが、実質的にみれば父子間に血縁関係が無いことが明白だ、という場合の子のことです。形式的に見れば嫡出推定を受けてしまう場合ですので、下記の「推定を受けない嫡出子」とは異なります。父が推定の及ばない子についての親子関係を争いたい場合、嫡出否認の訴えを提起する必要はなく、親子関係不存在確認の訴えで争うことができます。
最高裁は、推定の及ばない子にあたる例として、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情がある場合を挙げています(最高裁平成12年3月14日判決)。
前記の嫡出推定を受けない嫡出子のことです。
例えば、「婚姻前に懐胎し、婚姻成立後100日目に生まれた子」がこれにあたります。妻が夫としか性交渉をしたことがなく、どう考えても夫の子でしかありえないという場合であっても、前記の嫡出推定の要件に当てはまらない以上は、推定を受けない嫡出子になります。
推定を受けない嫡出子について、夫が自分の子供ではないと主張したい場合は、親子関係不存在確認の訴えを提起することになります。この訴えは、夫に限らず訴えの利益さえあれば第三者からでも、そして子の出生後1年経過後でも、提起できます。
嫡出でない子(非嫡出子)が父母の婚姻によって嫡出子となることを、準正といいます。
父が認知した子は、その父母が婚姻すると、嫡出子となります(婚姻準正)。
また、父から認知されていない子の父母が婚姻し、父が認知した場合にも、子は嫡出子になります(認知準正)。