離婚コラム
離婚すると相手方とは戸籍が分かれることになります。「子どもが相手方の戸籍に入っているので、実際に養育していく自分の戸籍に入れたい」ということはよくあります。
そのためには、その子の氏(「うじ」。≒日常用語でいう苗字)を変更する必要があります。
小難しい言い方をすると、日本国民一人一人の親族的な身分関係を登録し証明するもの、ということになります。昔はともかく現在では、「夫婦及びこれと氏を同じくする子」ごとに作られるものです。
例えばパスポートを作るときなどに「戸籍謄本」(「全部事項証明書」)を取り寄せた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。この「戸籍謄本」には、生年月日、父母の氏名、続柄、婚姻日、配偶者氏名などが記載されています。
昔はともかくとして現在では、結婚すると、両親と同じ戸籍から抜けて配偶者と同じ戸籍に入ることになります。
例えば山田一郎さんと川上花子さんが結婚すると、山田一郎さんを筆頭者とする戸籍が作られ、川上花子さんは両親の戸籍から抜けて山田一郎さんの戸籍に入り、「山田花子」となります。あるいはもし川上花子さんを筆頭者としたのなら、山田一郎さんは「川上一郎」として、川上花子さんを筆頭者とする戸籍に入ります。
婚姻届で「婚姻後の夫婦の氏」を選択するところがありますが、この選択で筆頭者がどちらになるのかが決まります。夫の氏(山田)を選択したのなら、山田一郎が筆頭者となります。
先の例で分かるとおり、同じ戸籍なら氏も同じです。
山田一郎・花子夫妻に子どもが生まれたら、その子の氏も山田です。
ここからが本題ですが、離婚した二人は夫婦ではなくなりますから、戸籍も別になることになります。
先の山田夫妻でいえば山田(旧姓:川上)花子の側です。
離婚届には、「婚姻前の氏にもどる者の本籍」の欄があって、夫(妻)が、もとの戸籍にもどるのか新しい戸籍をつくるのかを選択するところがあります。
先の山田夫妻が離婚する場合、「婚姻前の氏にもどる者」(花子)が、もとの戸籍(花子の両親の戸籍)に戻るのか、それとは別に花子を筆頭者とする戸籍を作るのかを選ぶことになります。
なお、山田花子を名乗り続ける(=婚氏続称)場合は、氏が違う以上は川上の戸籍に戻ることはできず、新たな戸籍を作ることになります。
先の山田夫妻でいえば山田一郎の側です。
こちらは、離婚してもそのまま山田一郎が筆頭者である戸籍にとどまることになります。
山田夫妻に子ども(純一)がいたとすると、両親が離婚しても「山田」純一のままです。
そのままでは子どもと氏が異なってしまいます。仮に花子が純一を育てていく場合であっても、そのままでは、純一が山田一郎の戸籍に入っている事実に変わりはありません。
そうすると、花子が復氏する(=離婚後に川上を名乗る)場合、「川上花子」が「山田純一」を養育することになってしまいます。しかし、実際に養育する親と子どもとで氏が違うのは、非常に不都合です。
そのため、家庭裁判所に「子の氏の変更許可審判申立て」をし、純一の氏を川上に変えてもらったうえで花子と同じ戸籍に入れることになります。
見かけ上は氏は同じですが、花子が婚氏続称する場合、「純一も花子も苗字は同じ山田だから、そのままで純一を花子の戸籍に入れられるのでは?」と思われるかもしれませんが、結論を言えばできません。
この場合も復氏する場合と同様に、「子の氏の変更許可審判申立て」をしたうえで花子の戸籍に入れる必要があります。
子どもの氏を、実際に養育する親の氏に変更してもらうために用いられる手続きです。
この手続きは、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所で行われます。なお、子どもが15歳未満の場合、法定代理人(=親権者)が申立てをすることができます。仮に、子どもを実際に養育する側であっても親権者ではないという場合には、親権者側に申立てをしてもらう必要が出てくることに注意が必要です。
子どもの氏を変更する許可の審判が家庭裁判所から出されたら、審判書謄本を添えて入籍届を提出することで、実際に子どもが新しい戸籍に入り氏も変更されることになります。
結婚中に生まれた子どもは、結婚で氏を変えなかった側(例えば父)の戸籍に入っており、したがって氏も同じになっています。
結婚で氏を変えた側(例えば母)が子どもを育てていくという場合、子どもが自分の戸籍に入っていないと、何かと不都合が生じてきます。そのため、家庭裁判所に「子の氏の変更許可審判申立て」を行ったうえで、自分の戸籍に入れる必要があります。