離婚コラム
離婚調停の流れについては別のコラムで解説しましたが、実際の調停期日に臨む際、気を付けておかないといけないことがいくつかあります。また、調停期日で実際に話をする相手は調停委員ですので、どのように接すればいいかをふまえておかなければなりません。
調停は、裁判所という公の場で、調停委員という第三者を間に挟む形でお互いが話合いをするというものです。原則として相手方と直接話をするのではなく、調停委員を介して話し合いをするため、まずは調停委員にあなたの主張を理解してもらうことが必要です。
調停委員の理解を得るためには、自分の主張を感情的にまくしたてるのではなく、自らの主張をきちんと話すことが大切です。
調停委員が双方の主張を聞いた上で、あなたの主張に合理性があると感じたら、相手方を説得してくれる可能性もあります。
一方で、仮に、あなたが横暴な言動をしていたら、調停委員は、あなたが家庭でも横暴な態度をとっている可能性があると考え、相手方の肩をもつ可能性も考えられます。もちろん、態度だけで判断されることはないと考えられますが、感情的になったり横暴な態度をとるよりは、礼儀正しく冷静に対応するほうが調停委員の理解を選られる可能性が高いと言えるでしょう。
調停において調停委員の役割が大きいことは言うまでもありません。また、調停委員は、良識があるとされる方が選ばれることになっていますが、必ずしも法律に精通しているとは限りません。
調停委員のバックには家事審判官(=裁判官)が控えています。しかし、法律のプロである家事審判官の意向や考え方を、調停委員が常に理解した上で仲介しているとは限りません。
調停委員は必要に応じて家事審判官に相談しながら調停を進めますが、どのような場合に家事審判官に相談すべきかを判断するのは調停委員です。したがって、必要に応じてきちんと家事審判官に相談しながら調停を進める調停委員がいらっしゃる反面、自らの判断で、強引に和解を勧めようとする調停委員もらっしゃるのが実情です。
納得できない和解案を勧められ、不満を感じながらも、調停委員の言うことだから…と合意してしまうと、取り返しのつかない結果を招きかねませんので、注意が必要です。
調停で合意すると、調停調書が作成されます。調停調書の効力は非常に強力で、違反すれば強制執行することも可能です。
また、調停という公の場で、自分の意思で合意したわけですから、後からその内容がおかしいといって争うことは極めて難しくなります(もし内容が気に入らなければ、最初から合意せず調停を不成立にすればよかったのですから)。
したがって、合意内容に納得できないのであれば、調停に合意する前に、弁護士などに相談するほうがいいでしょう。
一度合意してしまってから弁護士に相談しても手遅れとなってしまいますので、気を付けてください。
「調停委員を味方につけるようにしましょう」
「調停委員に失礼がないように」
「感情に訴えかけましょう」
などという助言がなされることも多いようです。確かに調停委員が味方につけることができれば、話し合いを有利に進めることができるかもしれません。
しかし、重要なのは、どのようにして味方になってもらうか、という点です。
中立の立場である調停委員を自分の味方に付けるためには、①法的に筋が通り常識的にみてもおかしくない主張をのべ、②その主張を証拠で裏付けるというのが王道です。
もっとも、離婚調停を担当する調停委員は法律の専門家ではないことがほとんどですので、「多少理屈に合っていなくても、とにかく感情に訴えかける」というのも調停委員のタイプによっては効果が期待できるかもしれません。しかし逆にそのような働きかけをマイナス方向に捉える調停委員もいますので、すべての場合にお勧めできるわけではありません。
たまにそのような愚痴を聞くことがあります。この場合、「こちらが筋の通った主張をしているのに、調停委員に理解してもらえない」のか、「こちらの主張にそもそも無理がある」のか、どちらなのかが問題です。
前者なら家事審判官に掛け合ってみることもできますが、後者ならどうしようもありません。一般的な相場や考え方からかけ離れた主張を貫くのも本人の自由ですが、仮に調停不成立となった後にどういうリスクがあるのかを検討せずにそうするのは、賢明なやり方とはいえません。
ただ、よくあるのは、「こちらの主張にもそれなりの根拠・理由があるのに、うまく主張できていない」という場合です。
離婚問題には、法的な主張と感情的な主張が入り混じっていることがほとんどですので、弁護士であっても、事実経緯を聞き取った上で双方の法的主張を整理したりするのには、かなりの労力を費やします。
離婚事件の調停委員は、法律の専門家ではないことがほとんどですので、数多くの主張の中から、法律的に筋が通っている主張を抽出できるとは限りません。
したがって、法的にも根拠があると考えられる主張は、冷静に、わかりやすく、根拠や証拠とともにきちんと主張する必要があります。
ところが、自分の言い分を声高に言い募るだけであったり、調停委員からの質問に回答せず、自分の言いたいことばかりを感情的に話し続けてしまうと、「この人は人の考えを受け入れられず、自分の考えだけが正しいと思っているようだ」などと思われ、調停委員の理解を選られない可能性があるのです。
どうしても調停委員が言うことに納得できない場合は、調停委員に対してきちんとした説明を求めたり、調停の進行に不満を感じていることを、理由とともに説明するのもひとつです。
調停委員は裁判官ではないので、調停委員が何かを判断することはありません。調停委員が、こちらの主張を理解せず、相手方の味方ばかりしていると感じるときや、意に沿わない和解を強引に進めようとする場合は、無理に和解せず、和解できない理由を調停員にきちんと伝えることをお勧めします。
調停は、夫婦間で離婚協議ができない・まとまらないようなときには、非常に有用な制度です。
しかし、一度調停調書の形になると、非常に重大な効力が発生し、内容を変更することは非常に難しいことを忘れてはいけません。
また、調停委員の個性に左右されてしまうことも珍しくなく、調停委員にうまく言い分を伝えられないケースもしばしば見受けられます。
ご自身で対応するのに不安があるという方は、まずは弁護士に相談してみることをお勧めします。