離婚コラム
離婚や婚姻の無効以外にも、民法には「婚姻の取消し」という制度があります。法律に定められた原因がある場合に、ある一定の者が家庭裁判所に請求することによって、取消しが可能となります。①不適法な婚姻の取消しと②詐欺または強迫による婚姻の取消しの2種類があり、①は公の見地から認められるもので、②は私益の見地から認められるものです。
本当なら成立しないはずの婚姻が何らかの事情で成立してしまったという場合のものです。
具体的には、婚姻不適齢の者の婚姻、重婚、再婚禁止期間中の婚姻、違法な近親婚の場合です。
父母の同意を欠く未成年者の婚姻届が受理されてしまった場合。
不適齢者が適齢に達したとき。ただし不適齢者自身は、適齢に達したあと3カ月間は取り消すことができます。
前婚の解消もしくは取消しの日から起算して100日を経過したとき、または女性が再婚後に出産したときは、取り消せません。
各当事者、その親族又は検察官です。ただし検察官は、当事者の一方が死亡した後は取消を請求できません。重婚や再婚禁止期間違反の場合は、前婚配偶者や後婚配偶者も取消しを請求できます。
私益の見地から認められる取消しで、詐欺または強迫を受けて婚姻をした者を保護するため認められています。
詐欺または強迫を受け、これによって婚姻をした場合です。詐欺や強迫を相手方から受けた場合だけでなく、第三者から受けた場合も含むとされています(ex.男性の母から強迫を受けて、男性と婚姻した場合)。
詐欺については、騙す行為自体に相当強い違法性があり、しかもそのことで生じた誤解が一般人にとっても相当重要な内容である場合でなければならないと考えられています。強迫についても、相手方や第三者の言動に恐怖を感じればそれで直ちに強迫にあたるわけではありません。詐欺と同様に、その言動に相当強い違法性がある場合でなければなりません。
詐欺を発見してあるいは強迫を免れて3カ月を経過した場合、あるいは婚姻を追認(=事後的了承)した場合、取り消せなくなります。
詐欺・強迫を受けて婚姻をした本人だけです。
婚姻の取消しを求める訴えを提起することになりますが、その前に調停を行う必要があります(調停前置主義)。
取消しを認める判決を受けるまでは、婚姻関係は有効に存在していることになります。取消しがなされると、その時点から将来に向かってのみ取消しの効力が発生します。もっとも財産関係については、婚姻当時に遡った処理がされることになります(748条)。