離婚コラム
公務員として働く人の割合は諸外国と比べ低いと言われているようですが、夫婦のどちらかあるいは双方が公務員であるということは珍しくありません。一口に公務員といっても様々な職種がありますが、ここでは自衛隊員、警察官、教師、県庁・市役所職員といった方の場合について考えていきます(公務員という言葉から想像しやすい職種の方々ですね)。
最近では非正規雇用の公務員も増えてきているようですが、一般的には安定した雇用関係にあります。そのため、離婚問題に関連して婚姻費用や財産分与といった形でお金を請求する側にとっては有利になります。
相手方が婚姻費用や養育費を払わないという話はしばしば聞きますが、例えば公正証書や調停でこれらを取り決めておけば、強制執行で給与を差押えすることができます。
義務者(=婚姻費用や養育費を支払う側)が民間の会社員ですと、取り決めた後で(場合によっては嫌がらせの意味も込めて)転職してしまい、給与を差し押さえようとしても転職先も分からないということがあります。しかし公務員の場合、安定した職場を辞めて転職しようという方は少ないですので、比較的差押えが成功しやすいのです。
公務員の場合、勤務先が倒産するおそれはまずありませんし、退職金についての規程もきちんと整備されています。
そうすると、退職金をほぼ確実に受け取れる可能性が高く、かつ夫婦共同で築き上げた財産としての退職金(=婚姻期間に対応した金額)はいくらになるのかという計算も、比較的容易に行えるということになります。そのため、退職金が、離婚時の財産分与の対象となる財産であると判断される可能性も高くなります。
公務員の場合、いわゆる官舎に住んでおり、持ち家はないということもよくあります。仮に民間勤めなら住居費として相当な金額を支出しているはずのところ、その支出を削った分だけ貯蓄に回していることもよくあります。特に共済組合で貯金している(共済預金)という家庭も多いのではないでしょうか。これが夫婦共同で築き上げたものならば、当然ながら離婚時の財産分与の対象だということになってきます。
公務員は信用力があるため、銀行などからの融資を受けやすい立場にあります。そのため、人によっては、銀行から数千万円のローンを組んで、複数のワンルームマンションを投資物件として所有しているといったこともあります。
公務員というとお堅いイメージがありますが、本業の収入が安定しているため、意外に大きなリスクを取って投資に勤しんでいることもあるようです。こうした投資用物件や賃料収入といった財産も、離婚時の財産分与の対象として考えていくことになります(その場合、反面として負債も考慮することになりますが)。
かつての公務員共済は現在では厚生年金に統合されていますが、年金分割の対象となることは同じです。
合意分割の前提としての情報提供の請求や年金分割の請求は、国家公務員共済組合や地方公務員共済組合に対して行うことになります(民間の会社員の場合は年金事務所に対してですが)。
公務員の離婚問題を考える際、公務員の身分と収入が安定しているということが最大の特徴になります。公務員が離婚を求める側なのか求められる側なのか、あるいは相手方も公務員なのかそうでないのかによって、その特徴はどちらにとっても有利にも不利にも働きます。
有利な離婚を目指すには、こちら側と相手方のそれぞれがどういう立場に置かれているのかを総合的に考慮しつつ、進め方を検討していく必要があります。