離婚コラム
親権は、権利とはいうものの、実質的には義務ともいうべきものです。そのことは、民法で端的に定められています。
「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」(民法820条)
そこで、親権者が子どもを虐待するなど監護養育が不適切な場合には、親権を喪失させたり一時停止させたりする制度が設けられています。
虐待、悪意の遺棄、親権行使が著しく困難又は不適当で子どもの利益を著しく害する場合、家庭裁判所の審判で、親権を喪失させることができます。ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みの場合は除外されます。なお、親に有責性(落ち度)があることは要求されていません。
「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。」(民法834条)
親権行使が困難又は不適当で子どもの利益を害する場合、家庭裁判所の審判で、親権を停止することができます。停止期間は2年以下です。親の有責性(落ち度)が要求されていないのは、親権喪失と同じです。
「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。」「家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。」(以上、民法834条の2)
親権停止の期間が過ぎれば親権は復活します。また、親権喪失・停止の審判がなされた原因が消滅した場合には、親権喪失・停止の審判を取り消してもらうことが可能です(民法836条)。
たとえば相手方が子どもを虐待するような場合、子どもを連れ別居したうえ、離婚とともに自らを親権者として指定するよう要求していくことが多いです。別居して事実上の関係を断ち、離婚して相手方はもう親権者ではないとなれば、子どもの利益を守るという目的を達成できるからです。したがって、このような場合に、離婚とは別個に親権喪失・停止の審判を申し立てることは、あまり多くはないように思われます。