離婚コラム
「人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求」とは、一つの訴えですることができます(人事訴訟法17条)。
たとえば、夫がAと不貞したことを理由に、妻が東京家庭裁判所に夫に対する離婚訴訟を提起しようとするとき、Aに対する損害賠償請求訴訟も一つの訴えで提起できます。具体的には、東京家庭裁判所に提出する一つの訴状の中に、夫に対する離婚とAに対する損害賠償請求との2つの内容を書くことができる、という意味です。Aに対する損害賠償請求は、本来ならば地方裁判所or簡易裁判所で取り扱います。ところが人事訴訟法17条があることにより、家庭裁判所でも扱えるようになるというわけです(※)。
(※)妻が東京の千代田区に、夫とAが大阪に住んでいるという場合、夫に対する離婚訴訟は、東京家庭裁判所で提起できます。Aに対する損害賠償請求は、東京地方(簡易)裁判所で提起できますが、東京家庭裁判所でも提起できることになります。
また、家庭裁判所で夫に対する離婚訴訟が続いている間に、Aに対する損害賠償請求をその家庭裁判所に提起することも可能です(同17条2項)。
さらに、例えば東京地方裁判所でAに対する損害賠償請求訴訟が続いているが、千葉家庭裁判所で夫に対する離婚訴訟が提起された、という場合もあります。この場合、要件を満たすならば、Aに対する訴訟を千葉家庭裁判所に移送することも可能です(同8条)。具体的には、千葉家庭裁判所に移送してほしいという申立てがあることと、東京地方裁判所が移送を相当と認めることが要件です。
ケースバイケースであり難しい内容を含みますので、ご依頼中の弁護士あるいは裁判所にお問い合わせください。