慰謝料コラム
「ラブホに入ったけど何もなかったって言うんです…。そんな言い訳って通用するんですか!?」というご質問を頂くことがあります。ラブホテルに入ったが性行為はしなかったという言い訳は、どう考えればいいのでしょうか?
ラブホテルは性行為をするための場所だというのが一般常識です。したがって、ラブホテルに入ったなら性行為をしたはずだ、というのはごく自然な(常識的な)判断です。いいかえれば、ラブホテルに入ったというのは、性行為があったというのとほぼイコールだとも表現できます。
不貞(性行為)の典型的な証拠として、ラブホテルへの出入りを探偵が撮った写真があります。言うまでもなく、探偵の写真に性行為中の様子が写っていることはまずありません。しかしラブホテルへの出入りが写っているだけでも、裁判所は、不貞があったと認定しているのです。それはなぜかと言えば、ラブホテル=性行為をするための場所、という特殊性があるからに他なりません。とはいえ、数時間程度過ごした証拠は必要かと思われます。
もちろん現実に性行為をしたのかどうかは、ラブホテルに同室した者しか知りえないことです(※)。
(※)密室で性行為があったことを裁判で証明しようと思えば、基本的には、性行為があったと認めている同室者を尋問するしかありません。
可能性の問題で言えば、「ラブホテルに入ったが本当に何もなかった」という事態もありえるかもしれません。カラオケとゲームで盛り上がってそのまま朝になった、直前で性交渉をする気が無くなった、等々の理由で本当に性交渉をしなかったということも、あるかもしれません。
しかし、言ってしまえばそれは単なる結果論であって、そもそもなぜラブホテルに入ったのかという話かと思われます。純粋にゲームなどを楽しむためだけに、わざわざラブホテルに入らなければならない理由はありません。また、性行為直前でその気がなくなったとしても、それ迄あったからこそラブホテルに入ったのだろう、というだけの話です。
とはいえ「ラブホテルに入ったが肉体関係は無かった」という点について、相手方(被告)から説得力ある反論や証拠が出てくる可能性もないではありません。「ラブホテルの出入りを押さえた以上、不倫慰謝料は認められて当然だ」などという油断は禁物です。
ラブホテルは性行為をするための場所に他ならず、極めて特殊な場所です。二人きりでいた場所がラブホテルの一室だとなると、被告からかなり説得的な反論がなされない場合や、メールやラインなど他の証拠から不貞があったのではないかと思われる場合は,裁判官も「性行為をしたはずだ」と考えてくれる可能性も高いように思われます。
したがって、ラブホテルに入ったのを認めている点について、まずは証拠を取っておくべきです。もっとも裁判官は、たとえばラブホテル滞在時間が極めて短いような場合、性行為がなかったと考える可能性もありますので、その点には注意が必要でしょう。