慰謝料コラム
「あなたの妻(原告)が、あなたと肉体関係を持った女性(被告)に対して、不倫慰謝料300万円を請求する訴訟を起こした。その後、被告から訴訟告知が届いた」という場合を考えてみます(以下、このケースを前提に解説していきます)。
被告としては、「もし自分が裁判に負けた場合の責任を、あなたにも分担してほしい」という趣旨で、訴訟告知をしてきているのです。ここで訴訟告知を受けたあなたとしては、その訴訟に参加するかどうかは自由です。参加したうえで三者間の関係を一回的に解決できる可能性もあるかもしれません。なお、その訴訟に参加しなかった場合には、後から文句を言えなくなります。
ある訴訟の当事者ではない第三者に、その訴訟に参加する機会を与えるための手続きです。
妻は女性にだけ不倫慰謝料を請求する訴訟を提起してきているわけですが、女性があなたに訴訟告知することで、「あなたは、その訴訟に参加させる機会を与えられた」ということになります。その訴訟に実際に参加するかどうかは、あなたの自由です。
上記裁判の当事者はあくまで妻と女性だけです。訴訟に一切関与していない第三者であるあなたとしては、判決の内容に従う義務はありません。しかし、あなたが訴訟告知を受けた場合には、妻と女性との訴訟の裁判の効力が、あなたにも及びます。実際には裁判に参加しなかった場合であっても同じです。
たとえば上記裁判で女性が敗訴して、慰謝料100万円の支払いを命じられ実際に支払ったとします。
仮に訴訟告知を受けていない場合、女性があなたに求償請求(=立替分の請求)をしてきたとしても、あなたとしては「そもそも100万円という金額がおかしい」と訴訟で争えることになります。すでに述べたとおり、訴訟に関与していない夫としては、判決内容に拘束されるいわれはないからです。
しかし訴訟告知を受けた場合なら、あなたは100万円という金額について争うことはできなくなります。女性としては、後であなたから金額について争われることを封じるのを主な動機として、訴訟告知をしてきているわけです。
妻と女性の判決の内容をそのまま受け入れ、後で女性から求償を受けたら淡々と応じよう、という方向です。妻と女性の双方の対立にあえて首を突っ込まず大人しくしておくというのはある意味賢明であり、一般的にはこの方向が多いように思われます。
訴訟告知を受けたうえで積極的行動を取るのであれば、訴訟に参加して被告と協力して請求額の減額を図ることが多いでしょう。たとえば、被告と関係を持った時点で原告との婚姻関係が破綻していたことを(被告とともに)主張するといった方向です。
あと、あなたが原告に既に慰謝料を支払ったのであれば、訴訟に参加したうえでそのことを主張しておくべきでしょう。
なお、訴訟に参加して原告(妻)に味方するということも、できないわけではありません(たとえば女性とは関係を清算し、妻とは婚姻を継続することで決心したという場合には、そういうこともありうるでしょう)。但しその場合、被告の感情的反発を招く可能性は否定できません。
訴訟告知を受けた者がこれを放置するのは自由ですが、参加する機会を与えられたにもかかわらず参加しなかった以上は、訴訟の結果を受け入れなければなりません。
上記の例で妻があえて女性だけを訴えたのは、もしかすると妻としてはあなたとの修復を希望しているのかもしれません。訴訟告知を放置するのか、あるいは訴訟に参加するのかは、今後の夫婦関係や女性との関係をどうしたいのかをよく考えたうえで決めるべきでしょう。