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エトワール法律事務所 慰謝料

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慰謝料コラム

はじめに

夫のお気に入りの風俗嬢に不倫慰謝料を請求することはできるのでしょうか。風俗嬢の立場から言えば、「単に客から指名されたのでサービスを提供しただけだ」ともいえそうです。裁判例でも、店内での肉体関係について、不倫慰謝料は発生しないとしたものがあります。一定の場合には風俗嬢への不倫慰謝料請求が認められていますが、どちらかといえば夫に離婚を切り出して慰謝料を請求するほうがベターかと思われます。

風俗嬢に不倫慰謝料請求するときのハードル

どの風俗嬢かの特定

ある風俗店に夫が入り浸っていると分かっても、どの風俗嬢なのか特定できないと慰謝料請求ができません。せめて名刺くらいの証拠は必要でしょう(逆に名刺があればそれで十分、というわけでもありませんが)。

既婚者と知っていた?

風俗嬢が、夫が既婚者だと知っていた(=故意)か、知らなかったことに過失があることが必要です。風俗嬢が店内でサービスを提供しただけなら、既婚者だと知る機会はなかったという場合も十分ありえます。過失は無かったと反論されると、一般論としては証明が難しいでしょう。

そもそも不法行為ではない?

後記裁判例が述べていますが、「婚姻共同生活の平和を害するものではない」として、そもそも不法行為にならないという考え方もあります。もっともこの点については、“既婚者と知って肉体関係を持った以上、不法行為には該当する”というのが、どちらかといえば一般的な考え方のように思われます。

正当業務行為

風俗嬢は性的サービス(例えばソープランドでは性交渉そのもの)を提供するのが仕事です。そのため、“店での行為は正当業務行為であり、慰謝料支払い義務は発生しない”という考え方も強いです。性交渉を持つのが“正当”業務なのか?という疑問をお持ちになるかもしれませんが、その点はさておき結論として、店内の行為については慰謝料支払義務は認められないという考え方が強いように思われます。

裁判例

クラブのママの枕営業→不倫慰謝料は認められず

この裁判例は、「ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には、当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではない」から、不法行為にはならないと述べ、不倫慰謝料を認めませんでした(東京地裁平成26年4月14日判決)。なお、枕営業は、ソープランドの風俗嬢とは違って誰に営業するかを自由に決められる(=「指名されたからサービスしただけ」とはいえない)のですが、そのことは無関係であるとこの裁判例は言っています(出会い系サイトを用いた売春やデートクラブと変わりないから、という理由です)。

ソープランド店内での性交渉→不倫慰謝料は認められず

夫がソープランド店内で風俗嬢と複数回性交渉を持ち、嬢が店を辞めた後も、店の利用料金と同額を支払って関係を継続したというケースです(東京地裁平成27年7月27日判決)。

この裁判例は、店内での性交渉については、不倫慰謝料は発生しないと判断しました。「利用客・・・が対価を支払うことにより従業員である被告が肉体関係に応じたものであると認められ、それ自体が直ちに婚姻共同生活の平和を害するものではないから、これが原因で原告とCとの夫婦関係が悪化したとしても、被告が故意又は過失によってこれに寄与したものとは認め難い」というのがその理由です。

なお、この裁判例でも、風俗嬢がソープランド店を辞めた後の肉体関係については不倫慰謝料が認められています。

まとめ

風俗嬢に不倫慰謝料を請求するにしても、そもそもどの風俗嬢だと特定できるのか、仮に特定できたとして夫が既婚者と知っていたといえるのか、という問題があります。さらに風俗嬢の立場からいえば、客からの指名を断ることはできません。そのため、店内での性交渉について不倫慰謝料を認めるのは酷だという考え方も成り立ちうるでしょう。おそらく、上記裁判例もそのように考えたのだと思われます。

とはいえ、店内にとどまらず店外でもということになってくると、単なる客と店員との関係とは異なってきます。言ってみればその場合は、「夫の不貞相手の職業が、たまたま風俗嬢であっただけ」とも表現できるでしょう。

現実問題としては、夫が店外で関係を持っているというよりは、風俗店に入り浸っているケースの方が多いかと思います。その場合に風俗嬢に不倫慰謝料を請求したところで、問題が抜本的に解決されるわけではありません。風俗であっても不貞行為として離婚原因になりえますので、離婚の手続きを進めつつ,その中で夫に離婚慰謝料を請求することも検討すべきでしょう。

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