解決事例
女性
30代
子ども:なし
担当弁護士:稲森 暁子
婚姻1年目に夫の不貞が発覚し,ご相談者は今後の婚姻関係に不安を感じたものの,夫が深く反省しているようであったため,今後も婚姻関係を続けていきたいという希望を受け入れて結婚生活を続けていました。しかし,夫婦共有名義で不動産を購入し,新しい生活を始めた矢先,夫の二度目の不貞行為が明らかになりました。その上,ご相談者が夫の素行調査を行ったことについて夫が糾弾し始めたため,これ以上婚姻関係を続けることは難しいと感じて,離婚を考えるようになりました。
交渉を重ねていく中で,慰謝料の支払いを優先させると夫がローンを借り換えることが難しくなりご相談者名義の住宅ローンが二十年以上残ったままとなってしまうこと,離婚後も共有名義の不動産が残ってしまうこと等によるリスクを看過することはできないという結論に達し,当初の請求額よりも低い金額となりましたが,慰謝料として48万円の支払いを受けることで協議がまとまりました。
慰謝料の金額を優先させるか,ご相談者名義の住宅ローンを返済して不動産の共有状態を解消するか,という選択はかなり難しいものでした。
ご相談者の管理下におくことが難しい不動産やその住宅ローンが離婚後も長年残ることによるリスクや心理的負荷を過小評価することはできないこと,協議が整わず訴訟になった場合にはこれを解消することが難しいということから,慰謝料の金額については譲歩しての解決となりましたが,協議を重ねての結果にご納得いただけました。
相談内容と弁護士対応
まずは夫婦とその両親とで離婚協議を試みたものの,夫が不貞行為により婚姻関係を破綻に至らしめたことについて全く反省がなく,一方的な離婚条件を主張されたため,ご相談者は当事者同士の話し合いは難しいと感じられ,ご相談に至りました。
受任後相手方に連絡したところ相手方にも代理人弁護士がつき,離婚条件を整えていくことになりました。
主な争点は自宅不動産及びこれに関するご相談者名義の約3000万円の住宅ローンの処理と,不貞慰謝料の支払いについてでした。
自宅不動産はオーバーローン状態であり,売却してもローン全額を返済できず700万円以上の負債を返済しなければならないことは明らかでした。ご相談者が自宅不動産を出て別居した後,自宅には夫と夫の両親が住んでおり,夫側で取得を希望していたことから,自宅不動産を売却せず残ローンごと自宅不動産を夫が引き取る形での解決を図ることになりました。
残ローンについては夫が他の金融機関で借り入れを行うことで返済のめどがつき,ご相談者のローンを完済できる見込みとなったのですが,次に慰謝料の金額が問題となりました。夫の収入からするとこのローンの返済を行っていくことが精一杯で,このほかに慰謝料の支払いをすることは分割払いにしたとしてもかなり難しいという主張が夫側からされました。しかし,不貞相手からは既に慰謝料が支払われていたとはいえ,不貞行為を繰り返した夫から慰謝料が一切支払われないままで解決とすることはご相談者の心情的に受け入れ難く,慰謝料支払いを求めて交渉を行っていくことになりました。