解決事例
女性
30代
子ども:なし
担当弁護士:稲森 暁子
ご相談者と夫は婚姻以来同居して生活を共にしてきましたが,夫は家族の時間より仕事を優先させてしまうため,すれ違いの生活が続いていました。コミュニケーションが十分に取れない中でもご相談者は婚姻生活が円満にいくよう努力してきましたが,ある時その努力を無に帰すような出来事が起こり,ご相談者は婚姻関係を続けていくことが困難と考え,別居して離婚の協議を進めていくことを決意して,ご相談に至りました。
その後離婚自体が問題になる局面もありましたが,財産分与についてご相談者が金額面で若干譲歩の姿勢を見せたことで夫の理解が得られ,離婚が成立しました。財産分与を取り決めた他,夫の名義の口座に預けていたご相談者の特有財産も取り戻すことにも成功し,財産関係について問題を残さず調停を成立させることができました。
本件のように,ご夫婦の一方の主観的には婚姻関係が完全に破綻してしまっていると言いうるケースでも,法定の離婚事由がないときには別居して時間をかけて破綻状態を作り出して離婚に持ち込むか,相手方の同意を得て離婚するか,というのが一般的な進め方になります。
本件では夫がかなり強硬に離婚に反対していましたが,調停を申し立ててご相談者側の事情を調停委員にきちんと理解してもらい,調停委員からもご相談者の意向と今後の見込みを根気強く説明してもらえたことから,離婚に向けた話し合いをすることができました。
離婚が時間の問題というケースでも離婚自体を争われると離婚訴訟の提起が必要になりご本人への負担も小さくないため,調停の段階で離婚の同意を得られたのは進行に関しては利点が大きかったと言えます。
金融商品の中には中途解約すると解約返戻金が実際の支払金を大きく下回るものがありますが,共有財産から生じた利子が現金のまま残っておらず,金融商品(の一部)となっている場合には,該金融商品の現在の価額(解約返戻金があるものはその額)を財産分与の対象額とするというのが裁判所実務の考え方のようです。本件では共有財産を運用して得た利子を全て別の金融商品の支払いにあてる形で更に運用していたため,当該金融商品を共有財産として,その解約返戻金を価額を計上してその他の財産と併せて分与額を定めることになりました。
相談内容と弁護士対応
婚姻期間と別居期間からすると,明確な離婚事由があるとは言い難いところもあったことから,婚姻費用の請求をしながら相手方を説得して離婚の同意を得る方向で進めることになりました。
弁護士から連絡したところ婚姻費用はすぐに支払われるようになりましたが,夫は離婚に応じる意思は全くなく,交渉は難航しました。ただ,少し時間をかければ離婚が認められる見込みがあったため,調停でも離婚に向けての話し合いが可能であると考え,離婚調停を申し立てることになりました。
調停でも夫からは離婚には応じるつもりはないという主張がされましたが,離婚は時間の問題ということを調停委員を通じて説明してもらったり,夫の代理人からも見通しを伝えてもらったりということを数回の期日を通して繰り返したところ,離婚に向けて協議することに同意を得られ,財産分与について検討していくことになりました。
主な争点になったのは,共有財産を運用して生じた利子を他の金融資産に再投資している場合にその価値をどのように算定するかということでした。再投資先の金融資産は長期保有を前提としているため,調停の時点では解約返戻金が低く定められており,そのままの金額で算定すべきかどうかが争われました。