離婚コラム
家事事件手続法では、「244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申し立てをしなければならない」と定められており(家事事件手続法257条1項)、離婚訴訟もその対象となっています。この内容は「調停前置主義」と呼ばれています。
家事調停手続きを経てからでないと訴訟手続きを進行させないという原則のことです。
調停前置主義が取られている理由としては、①家庭内の紛争をいきなり訴訟手続(傍聴人に公開される法廷で、双方が対決する手続き)に持ち込むのは妥当ではなく、非公開の調停手続きで処理した方がよい、②法律を画一的に適用して解決される訴訟ではなく、調停で柔軟な解決を試みた方がよい、といった点が挙げられています。
法律上は、その場合でも訴えが却下(門前払い)されるわけではなく、裁判所の職権で事件が調停に付されるということになっています(家事事件手続法257条2項)。もっとも実務上は、離婚訴訟の提起の際には、調停が不成立に終わったことを証明する書類を要求されます。具体的には、調停をした裁判所で調停不成立証明書を取得して離婚訴訟の訴状に添付することで、調停が不成立に終わったことを証明する必要があります。
なお、職権で事件が調停に付される場合には、原則として管轄権を有する裁判所(=相手方の住所地を管轄する家庭裁判所)が処理することになります。例外的に「特に必要があると認めるとき」には、それ以外の裁判所が処理することもできると定められています(家事事件手続法257条3項)。
調停をせずに離婚訴訟を提起したとしても、「裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるとき」には、職権で事件を調停に付する必要はないとされています(家事事件手続法257条2項但書)。相手方の所在不明の場合や、事案の内容などを鑑みて到底調停成立の見込みがない場合などが、この例外の場合に該当すると考えられています。
実際の裁判例では、「離婚につき以前調停がなされ不成立となり、地方裁判所に離婚の訴を提起したのち右訴が取下により終了している場合において、その後再び新たに離婚の訴を提起するに際しては、その離婚の訴について調停をへる必要はない」と述べているものがあります(名古屋地裁昭和48年2月19日判決)。