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不倫慰謝料を支払う義務が生じるのは、どんなとき?

はじめに

交際相手が既婚者であると知って肉体関係を持った場合に、不倫慰謝料を支払う義務が生じることになります。

しかし、「既婚者であることをあなたが知っていたこと」や「肉体関係があったこと」などは、不倫慰謝料を請求する相手方が証明すべきことです。あなたの立場からいえば、相手方がそのようなことを証明できない場合は、不倫慰謝料の支払いを裁判で命じられることはありません。

不倫慰謝料を支払う義務が生じる場合

あなたが交際相手を既婚者であると知って肉体関係を持ったのであれば、原則として慰謝料を支払う義務が発生しますが、より厳密には、不倫慰謝料を支払う義務は、以下の3つの条件が揃って初めて発生します。訴訟では、不倫慰謝料を請求する側(相手方)がこれらの事実を証明する必要があります。

条件1:あなたの故意・過失

裁判で不倫慰謝料が認められてしまうのは、交際相手が既婚者であるとあなたが知っていた場合(故意)か、既婚者であると知らなかったがそのことに落ち度がある(過失)場合に限られます。

条件2:あなたによる利益侵害行為

典型的には肉体関係を持つこと(=不貞行為)です。肉体関係にまで至らなくても、交際相手と相手方との夫婦関係を破壊するような行為は、これに該当する可能性があります。

条件3:損害、因果関係

上記利益侵害行為によって、精神的苦痛という損害が相手方に発生することが必要です。

不倫慰謝料の支払いを命じられない場合(その1):交際相手が既婚者だと知らず、かつそのことに過失がない場合

交際相手が既婚者だということを知らなかった場合、結果的に不貞行為があったとしても、その行為についての責任を負う必要はありません。既婚者であることを知らなければ、不貞行為を避けることができないためです。したがって、不倫慰謝料を支払えと裁判所に命じられることもありません。

しかし、知らなかったことに過失がある場合、言い換えれば「気を付けていれば既婚者だと分かったはずだ」という場合は、不倫慰謝料を支払う義務が発生してしまいます。

一般論でいえば、交際相手が職場の同僚や上司などの場合だと、過失がある(=既婚者だと気づいて当然だ)と判断されてしまう可能性が高いですが、職場の他の人にも既婚者であることを隠していたような場合には、過失がないとされる可能性もありえます。

「過失がある」という言い分に対してきちんと反論しましょう。

「既婚であると知らなかった」と主張するだけでは足りません。知らなかったことに過失がないこと(既婚であることを知らなくても仕方がない、もしくは当然であると言いうるような事情があること)を、あなたがきちんと主張していく必要があります。

既婚者であることを知った後の行為については責任があります。

「肉体関係を持ち始めたころには既婚者だと知らなかったが、後で既婚者だと知った。それ以後も関係を継続した」という場合があります。この場合、既婚と知った後の不貞行為については、慰謝料が認められてしまいます。

不倫慰謝料の支払いを命じられない場合(その2):相手方が不貞行為を証明できない場合

証明失敗のリスクは請求側が負っています。

相手方が訴訟で不倫慰謝料を請求したいのであれば、相手方が、あなたと交際相手が肉体関係を結んだ事実(=不貞行為の事実)を証明しなければいけません。

したがって、実際にはあなたが交際相手と肉体関係をもったのが事実であったとしても、相手方が立証に失敗した場合には、あなたが不貞行為の事実を認めない限り、原則として慰謝料の支払いを裁判所から命じられません。

即断は禁物!

しかし、探偵などによる調査報告書や不貞行為自体の証拠(例.性行為中の写真や動画など)そのものはなくても、やりとりしたメールやLINE等の文面など、様々な状況証拠を積み上げた結果、裁判所が「不貞行為はあった」と判断してしまうことがあります。最近は、不貞行為自体を直接証明するような証拠があることは一般的に少なく、メールやLINE等が証拠として提出されることが増えています。

また、メールやLINE等に直接的な表現がない場合でも、それらの証拠の積み重ねによって、裁判所が「不貞行為があったとまではいえないが、婚姻関係を破壊するような行動はあったようだ」と判断した結果、慰謝料請求が認められてしまうこともありえます。

さらに、交際相手があなたとの肉体関係を交際相手が認めてしまい、それが証拠になってしまうこともあります(配偶者に問い詰められ、罪悪感から不貞行為の詳細を話してしまうというケースはよくあります)。

あなたは「不貞行為の証拠はないはずだ、だから、相手もそのうち諦めるだろう」と思うかもしれませんが、相手方が訴訟を提起して色々な証拠を提出してくる可能性があります。事実があれば、何らかの証拠が存在する可能性がありますので、即断は禁物です。

不倫慰謝料が認められない場合(その3):不貞行為より前に婚姻が破綻していた場合

長期間別居していたような場合が典型です。

相手方が配偶者と長期間別居中に、その配偶者とあなたが不貞行為をしたという場合が典型です。

この場合、「不貞行為よりも前に婚姻関係が破綻していたのだから、相手方の利益の侵害がない(精神的苦痛は発生しない)。したがって、慰謝料は認められない」という主張を裁判所に認めてもらえる可能性があります。

しかし、不貞行為よりも前に婚姻破綻していたという反論は、請求された側の常套手段です。したがって、客観的な婚姻破綻やそのことを示す証拠がないかぎり、裁判官がその反論を聞き入れてくれることは少ないのが実情です(交際相手から「破綻している」と聞いていただけでは難しいです)。

まとめ

あなたが交際相手を既婚者であると知って肉体関係を持ったのであれば、原則として慰謝料を支払う義務が発生します。

例外として、肉体関係をもった時点で既婚者だと知らず、そのことに過失もない場合や、不貞行為よりも前に婚姻関係が破綻していた場合には、慰謝料を支払う義務は発生しません。また、相手方が、不貞行為の事実を証明できない場合にも、慰謝料は認められません。

しかし、相手方から不倫慰謝料を請求された際に、「肉体関係なんて全くない」「既婚者と知らなかった」「夫婦関係は既に破綻していたはずだ」などと主張しても、それで相手方が引き下がるとは限りません。それどころか、相手方の感情を逆撫でしてしまい、逆効果になってしまう可能性もあります。

既婚者だと知らなかったことに過失があるかないか、また、相手方が確保しているであろう証拠によって不貞行為の存在を証明できるかどうかは、非常に微妙な問題です。対応を間違えると、後の修正が難しい場合もあります。

相手方から請求を受けてしまったら、できるだけ早い段階で、弁護士にご相談することをおすすめします。当事務所の弁護士は、慰謝料請求を含む離婚・男女問題の豊富な実績がございますので、最善の解決方法をご提案いたします。

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